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外資系父ちゃんがおすすめする50冊

「銀河英雄伝説」田中芳樹 日本発SFの古典

 本編10巻、幕間や前日譚の外伝5巻、計15巻からなら長編SF小説。本編が完結したのが1987年にも関わらず、今だに増刷、アニメ化、舞台化されています。長年月の批評に耐える、日本発のSFの「古典」ですね。

    上質なファンタジー小説は、全く架空の世界を舞台としながらも精緻かつ現実社会を反映したリアルな設定、奥行きがあり魅力的な複数の登場人物、世の人に訴えかける骨太なテーマ、この3つが支えています。

    物語の前段や幕間に、彼が構築した世界、すなわち人類が宇宙に進出した後の国家の興亡、政治形態の変化、王朝内の闘争などが触れられます。作者の田中芳樹氏は、政治史や軍事史も含めて歴史への関心、造詣が深く、中国古代王朝の興亡や、ヨーロッパ近世の帝国間の覇権争いなどの博識が存分に活かされています。銀河英雄伝説であれば、人類の政治形態として、秀逸な独裁政治と、凡庸な民主主義は、どちらが貴いのか。

  40代になって読み返すと、主人公ヤン・ウェンリーの、時にダラけて見えるけれど、純粋に、好きなことと大切に思うことに対して常に真摯であるスタンスが、やっぱり好きです。10代で読んだ頃は当然だと思ったのですが、30代の幹部たちが壮年と描かれているあたり、自分の年齢を感じます。また、将官ではなく佐官として、空戦という特定分野で明確な強みを持ち、自由と酒と女性をこよなく愛し、若手の面倒見が良いオリビエ・ポプランが、人生のお手本と感じられるようになったあたり、やはりこの物語は何歳の方が呼んでも楽しいですね。

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)