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『サピエンス全史』人類はどのように発展し、幸福に至るか

 人類、ホモ・サピエンスは「認知革命」によって他の類人猿を圧倒し、「農業革命」と「科学革命」を通じて文明を発展させてきた。そして今後の人類の幸福のためには何が必要か、という問いを投げかける本。

 大きなスケールで考えるきっかけになります。人類が発展した契機である認知革命とは、膨大な数の見知らぬ同士が共通の思いによって協働できるようになった事。現在進行形の最新科学によって、これまでとは違った形で見知らぬ人同士を結びつけ、動かし、発展することになっていくかもしれません。農業革命が、貨幣、信用経済を生み出したように、最先端の科学は新たな信用を生み出せすはず。シェアエコノミー、アルゴリズムに基づく信用供与などは、新たに大きなビジネスとなる経済的活動の候補でしょう。そのような大きな人類の進化の流れを考えさせながら、本書の最終テーマは、我々人間にとって「幸せ」ってなんだろう、ということかと思います。

<認知革命>

 7万年前、突然変異によって人類は抽象的な概念を共有できる能力を身につけます。動物も、それまでの人類も、具体的な概念は共有していました。「あっちに行ったらライオンがいるから危ないよ」とか「家族の食べ物がたりないからマンモスを狩りに行こう」とか。具体的な目的のために、目に見えて大切な仲間達と共同作業をしていました。それが、共通の虚構を信じる事によって、膨大な数の見知らぬ同士でどでかい事を成し遂げるようになったのです。例えば「神」や「まだ見ぬ子孫」の存在を信じることで、首尾よく協力しあい、「神殿の建築」や「河川の治水」のような、大事業を行いはじめました。単体の動物としての能力を大きく超えた共同作業が可能になりました。

 多くの人を納得させ、信じてもらえる物語を語ること。これが成功すれば大規模な協力が可能になる。これが認知革命によって人類が獲得した進化です。もうひとつ、巨大な変化がありました。生物の進化は、少しずつ、同じ直線方向にしか進めませんが、人類は別の物語を語ること、信じることで、振る舞いを一気に改めることが可能になりました。チンパンジーは、何万年も前から、オスのリーダーを頂点とした群れで暮らしています。非常に長い時間をかけて、遺伝子の自然選択と、時に発生する環境の圧力や遺伝子の突然変異によって進化していきます。しかし人類は、昨日までは王権が絶対だと思っていた人々が、翌日からは主権在民だと向きを変えて生きることが可能です。文化の進化は、単体の動物種であれば何千、何万年かかる遺伝進化を迂回可能にしたのです。

<農業革命>

 単位面積あたりでより多くの人を生かしておく能力こそが農業革命の真髄。より多く生きられることが保証されるだけで、実は大多数の人にとって、生活水準を上げるものではないのです。同時に、定住によって所有が可能になる贅沢品はすぐに必需品となり、新たな義務を生じさせます。つまり、いったん慣れると、なしでは生きられなくなるのです。古代農耕民は、貧しくとも増えた所有物を失いたくないので狩猟民には戻れず、将来の不安に備えるべく厳しい労働に勤しみました。

 それでも人が所有できたのは、物理的にも、データ処理的にも、目の届く範囲、個人の脳が把握していられる範囲でした。古代シュメール人の名も知れぬ天才が、脳の外で情報を保持して処理するシステムを発明して、都市や王国や帝国の出現への道を開きます。それが「書記体系」です。

 私たちが特定の秩序を信じるのは、正しいから、ではなく、それを信じれば効果的に協力して、より良い社会を作れるから。これまで考案された中で貨幣は最も普遍的で、最も効率的な「相互信頼」の制度です。宗教は特定のものを信じるよう求めますが、貨幣は他の人々が特定のものを信じていることを信じるように求めます。

 書記体系を通じて、共通の文化圏内であれば地域、時間の制約を超えて広域で連携できるようになった人類は、貨幣を使って、異なる文化とも交易が可能になりました。

<科学革命>

 1620年、フランシス・ベーコンは「新機関」の中で「知は力なり」と語りました。知識の真価は、それが正しいかどうかではなく、私たちに力を与えてくれるかどうか。政治と経済が、科学の研究を支援し、科学は援助へのお返しとして、新しい力、資源の獲得を促し、そしてまた再投資されました。ヨーロッパの帝国主義者は、新たな領土とともに新たな知識を獲得することを望み、遠く離れた土地を目指して乗り出しました。近代経済が信奉する「成長」とは、人間の驚くべき想像力の賜物。経済全体が、生き残り、繁栄できるのは、私たちが将来を「信頼」しているから。「信頼」が世界に流通する貨幣を支えています。「信用 Credit」に基づく経済活動によって、私たちは将来のお金で現在を築くことができるようになりました。成長イコール正義、自由、安定であり、幸福は資本主義によってもたらされると。

 <幸福とは>

 ニーチェは語りました。「あなたに生きる理由があるのならば、どのような生き方にもたいてい耐えられる。有意義な人生は、困難のただ中にあってさえもきわめて満足のいくものであるのに対して、無意味な人生は、どれだけ快適な環境に囲まれていても厳しい試練にほかならない。」間違いなく一面の事実だと思います。同時に、何が有意義かは時代、文化、人によって違い、そこに科学的な定義や根拠はありえず、ある意味単なる個人的な妄想だと、著者は言います。

 幸福とは、物事が期待通り、もしくは期待以上に推移した時に感じるものだとすれば、現代科学を手にした人類はどこまで突き進むのか。私たちは何になりたいのか?そして、私たちは何を望みたいのか?最後に著者は大きな問いを投げかけます。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

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サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福