花も実もある楽しい読書

外資系父ちゃんがおすすめする50冊

中学生と親子で楽しめる小説 7選

 中学生の子供たちと親子で楽しんだ小説をご紹介します。どれも子供向けというわけではなく、すごく面白くてわかりやすい小説であるからこそ、大人も、本好きの中学生も楽しめるものばかりです。

 

 

1.きみの友だち 重松清

  素敵な作品の多い重松清さんの小説の中でも、私と中学生の長女が特に好きな一冊です。正確に言うと、それぞれが買ってしまったので家に二冊あります(笑)。主人公とその周りの子供たち、それぞれが主役となる短編が連なり、ひとつの長編として物語は進みます。

わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる ― 。

足の不自由な恵美ちゃん病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない…。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作小説。

 学校生活。「みんな」と一緒であること。思春期の子ども達は、みんなと一緒であろうと気疲れしたり、そうでない子をいじめたり、はじかれて辛い思いをしたり。いじわるに傷つき、やさしさに触れて大切なことに気づき、少しずつ変化し、成長する。様々な登場人物、それぞれの経験や気持ちの動きが、どこか自分や我が子と重なり、胸がしめつけられ、そして温かくなります。 

 友だち関係のあり方は人それぞれ。でも誰にとっても、友だちとふれあい、過ごした思い出は宝ものです。

 文庫版あとがきで重松さんが語っていますが、連載終盤にめぐりあった体験を踏まえて、最初に用意していた最終章の筋立てを変えたそうです。それはそれは素敵なエンディングでした。是非、多くの大人と、若い人たちに、読んでほしいと思います。

きみの友だち (新潮文庫)

きみの友だち (新潮文庫)

 

 

2.風が強く吹いている 三浦しをん

 娘たちが小学生のころに読破した、最初の大人向け小説だと思います。二人とも小学校6年生だったでしょうか。単行本で500ページのボリュームですが、二人とも夢中で読んでました。大学のあばら家学生寮に住む10人が箱根駅伝を目指すことになる、三浦しをんさんの、笑いあり(すごく多め)、涙あり(意外と多め?)の青春小説です。文庫本もありますが、単行本の表紙が素敵でオススメです。現代絵師の山口晃さんによる大和絵風で、登場人物と決めゼリフ、物語の場面が細かく書き込まれており、読後に見返すと、楽しくなります。

 登場する10人のメンバーが、一人ひとり個性的で、彼らの会話がすごく楽しく、気持ちの動きに心を打たれます。テンポ良く何度もクスリとさせられるやり取り、ハラハラドキドキする練習や試合の展開。大人も子供も、映像を見ているようにポンポン読めてしまいます。

風が強く吹いている

風が強く吹いている

 

 

風が強く吹いている (新潮文庫)

風が強く吹いている (新潮文庫)

 

 

3.精霊の守り人 上橋菜穂子

 中1の娘と二人して大いに楽しんだファンタジー小説。18世紀ごろの東南アジア、中央アジアを想起させる架空の世界を舞台に、中年に差し掛かる腕利きの女性用心棒と、政争と精霊に翻弄される王子を主人公とした物語です。

    精霊も出でくるファンタジーですが、文化人類学専攻の筆者が描く世界はリアリティがあり、伝承に部族の想いや知恵を込めた古き歴史時代を思わせます。民族の混血化で文化が変容したり、統一をリードした勝者側に都合よく歴史が改変されたり、産業革命後の帝国が国家経営の手段として膨張を図ったり、全10巻で描かれる社会背景は非常に現実的です。攻める側と守る側、敵味方の攻防という構図は、子供にも大人にも分かりやすく面白く、敵味方が情勢によって入れ替わるあたりはリアルです。

    主人公が30代の中年独身女性、その職業は用心棒、という設定もユニークです。超一流の戦闘能力の持ち主ですが、決してスーパーウーマンではなく、そこまでに至る過酷な身の上を思えば納得させられます。彼女が時に見せる母性や愛情が、物語に温かみももたらしています。もう一人の主人公である王子は、精霊とのハードな絡みに加えて、多国間のシビアな政争に巻き込まれ、翻弄されながらも、たくましく成長していきます。民族性が反映された各国王家の戦略の違い、同じ王家内でも立場を踏まえた王族達の考え方の違いは、物語に面白さと奥行きを与えています。

    第1巻の解説で恩田陸さんが、作家が異世界ファンタジーを書きたくなる理由を綴っています。「自分の存在する世界を、異世界という縮図で理解したい、描きたい、自分のものにしたい、という意識があるような気がする。」文化人類学者として、世界の秩序を俯瞰したい、理解したい、自分なりの言葉で解明したかったのではないかと。本書はまさに異世界を舞台としながら、読み手にどう生きるかのリアルなメッセージを届ける、素晴らしい物語です。

    子供と親、どちらも夢中になれますので、一緒に、存分に楽しんでください。

 

4.図書館戦争 有川浩

  本好きの中3の長女と一緒に、イッキ読みしたシリーズ。「図書館の自由が侵される時、われわれは団結して、あくまで自由を守る。」このクールな宣言は、現実の図書館法内の条文。これにインスパイアされた物語です。本の検閲を巡って図書館で戦闘が繰り広げられる、その点ではあり得ない世界なのでジャンルとしてはSF、すこぶるリアルな社会派風の設定と展開、同時に進むベタなラブコメ、というユニークさです。痛快な展開とは裏腹に、法律用語を含む難解な言葉も多用されるので、読書が得意な中学生、もしくは高校生ぐらいからがおすすめです。

   本の検閲を巡って図書館内外で銃器を使った戦闘が頻繁に発生するという「ありえない」世界において、それが必要とされるに至った政治的、社会的背景や、図書隊と呼ばれる武装機関の組織形体、階級制度などが丁寧に作り込まれています。自衛隊を舞台とする小説を多数書かれている有川浩さんの深い知見が、説得力をますために大いに活かされています。

  主人公の女性隊員と男性教員の「デコボココンビ」は、全巻を通じて掛け合いで楽しませます。途中からちょいちょい放り込まれるベタなラブコメも、登場人物に十分な思い入れができた後なので、先を楽しみに見守りたくなりました。登場するキャラクターはみな丁寧に描かれ、どこかしら理解できてしまう深みがあります。

  著者自身が本書をライトノベルと評しているように、テンポがよくマンガ的、若者向けな感もある一方、「表現の自由」へのプライド、出版界に横行する自主規制への異議、そういった著者の思いは、大人も感動させます。軽さと硬さあわせ持った、中高生から大人まで楽しめるエンターテイメントです。

図書館戦争シリーズ 文庫 全6巻完結セット (角川文庫)

図書館戦争シリーズ 文庫 全6巻完結セット (角川文庫)

  • 作者: 有川浩
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/09/08
  • メディア: 文庫
  • クリック: 2回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

5.一瞬の風になれ 佐藤多香子

 高校陸上部を舞台にした、とてもさわやかで、胸を熱くさせる青春小説。サッカー選手の夢破れ、得意の足をいかして陸上部で短距離走選手となった主人公が、天性のスプリンターである親友、部活の仲間たちやライバルと、切磋琢磨する成長物語。40代が読み返したくなる。中2が先生とこの本で盛り上がる。小6が初めて長編小説を読破する。何歳になっても、何歳で読んでも、好きなことを一生懸命に努力して磨き、真摯に仲間と向き合っていい影響を与え合う、そういう大切なことを思い出させてくれる素晴らしい本です。

 不器用ながらも才能を秘める主人公、素質を輝かせながらも壁にぶつかる兄や迷える親友、才能に憧れつつ懸命に努力する陽気な部活仲間、頼もしかったり面倒だったりする先輩、後輩、気になる女子部員や立ちはだかるライバルなど。登場人物がみんな素敵です。

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)

 

 

6.マスカレードホテル 東野圭吾

 推理小説は、子供には刺激が強いと思われるかもしれません。私自身、子供が自分でこの本を選ぶまで、東野圭吾さんの小説を読んだことがありませんでした。読了後に思い出させてくれたのは、自分が中学生だった頃、赤川次郎さんの三毛猫ホームズシリーズやアガサ•クリスティーの推理小説を読みまくったこと。あれらの名作と共通しているのは、事件そのものの描写以上に、魅力的な登場人物たちとその日常、そして謎解きにページが割かれている点。子供でも楽しく読み進められ、最後にはハラハラドキドキさせてくれます。

 高級ホテルにおける非日常的な日常の事件を楽しく見せつつ、最後には一気に本筋の事件が進んでいくストーリー展開は、一冊で二度おいしい、とでも言えましょうか。続編や映画版が見たくなること請けあいです。

 

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

 

 

7.バッテリー あさのあつこ

 主人公は、中学生になったばかりの少年で、天性のピッチャー。突出したピッチングの才能と、馴れ合わない尖った性格の持ち主である彼と、彼の周囲の人たち、バッテリーを組むことになるパートナー、チームメイトや監督、ライバル、弟たちの、人間としての成長を描く物語です。

 スポーツ物語だとすると、この物語の主人公の巧は、ピッチャーとしての才能はあまりに突出しています。サッカーなら、「キャプテン翼」のつばさ君がどれほどすごくても、チームとしてはいくらでもバランスが取れます。しかし少年野球のピッチャーがつばさ君レベルだと、スポーツの試合としては圧倒的になってしまいます。「バッテリー」は、野球というスポーツが舞台となっていますが、むしろ登場人物たちが、人として、傷つきながら、もがきながらも、少しずつ成長していく姿を描いた物語だと感じました。ゆえに、野球など全く知らない中1の娘が、夢中になって読み進めたのかなと。

 あまりに面白いので、読み終わった後、「続編はないのか!?」と騒いでいました。調べてみると、ありました。巧ではなく、別の人物が中心となって話が進むため、続編ではなく、スピンオフだ、という見方もあります。私としては、登場人物たちの、その後の成長がしっかり描かれていて、とても楽しく読めた続編でありました。

 

バッテリー (角川文庫)

バッテリー (角川文庫)

 

 

ラスト・イニング (角川文庫)

ラスト・イニング (角川文庫)